サイレント

one

最近、学ランの袖が短くなった気がする。
身長も伸びた。部活を辞めてから体は少し鈍って来た気がするけれど、確実に大人の体へと成長を遂げている。

なのにどうしたって樹里との年齢差は縮まらない。

箒で保健室の床を掃きながら一は生徒と一緒に窓を拭いている樹里を見遣った。
化粧気のない、真っ黒な髪の毛をした女子生徒と並べて見るとやはり樹里は大人だった。

同級生の女子が酷く幼く見える。
身体の線が違った。
樹里からすればやはり、一と尾垣を比べると一の方が酷く幼く見えるのだろうか。

「おーい、イチ!ちり取りいるー?」

保健室の隅で同じように箒で床を掃いていた相沢がちり取りを振って一に呼びかけた。

一は「いる」と答えて一カ所にゴミを集める。

順番に回ってくる保健室の掃除当番が今週、一のクラスに当たった。

相沢がちり取りを持ってゴミの前にしゃがんだ。
相沢の持つちり取りにゴミを入れていく。

しゃがんでいる相沢の頭を見つめながら一は微妙な気持ちになった。

友達の好きな女と隠れて付き合うのがこんなにも嫌なものだとは思わなかった。

もし自分が相沢の立場で真実を知ったとしたら許せない。一発殴るくらいはするだろう。
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