サイレント
樹里が連れていってくれたのは完全個室のちゃんこ料理屋だった。
肉や魚介類がたくさん入った鍋が二人の間でぐつぐつと煮立ち、立ち上る湯気が一の食欲をそそる。
本当はビールが好きな樹里だが、運転のために烏龍茶を飲んでいた。
一は箸で鍋の中を掻き交ぜ、煮えたものから次々と皿に取る。
「先生ってさ、学校じゃ平等だよね」
「え?」
「今日さ、俺と相沢喧嘩したじゃん。けど俺に特別扱いしないで相沢と同じように扱ってた」
「ああ。そりゃ、当たり前じゃん。そうしなきゃ疑われるし」
「まあ、ね。でも、おもしろくなかったかも」
一は正直に本音を口にした。樹里が困ったように微笑む。
そこで会話が途切れて一は言葉を探した。
母が帰って来たことを樹里に話さなくてはいけない。母が家にいる以上、黙っていれば知らずにいつも通り家に来た樹里と鉢合わせしてしまう。
隠しておけるものではないのだから、早く言わなきゃならないのはわかっていた。
けれど一自身突然のことに動揺していて、どう切り出せばいいのかわからなかった。
肉や魚介類がたくさん入った鍋が二人の間でぐつぐつと煮立ち、立ち上る湯気が一の食欲をそそる。
本当はビールが好きな樹里だが、運転のために烏龍茶を飲んでいた。
一は箸で鍋の中を掻き交ぜ、煮えたものから次々と皿に取る。
「先生ってさ、学校じゃ平等だよね」
「え?」
「今日さ、俺と相沢喧嘩したじゃん。けど俺に特別扱いしないで相沢と同じように扱ってた」
「ああ。そりゃ、当たり前じゃん。そうしなきゃ疑われるし」
「まあ、ね。でも、おもしろくなかったかも」
一は正直に本音を口にした。樹里が困ったように微笑む。
そこで会話が途切れて一は言葉を探した。
母が帰って来たことを樹里に話さなくてはいけない。母が家にいる以上、黙っていれば知らずにいつも通り家に来た樹里と鉢合わせしてしまう。
隠しておけるものではないのだから、早く言わなきゃならないのはわかっていた。
けれど一自身突然のことに動揺していて、どう切り出せばいいのかわからなかった。