サイレント
「ちょっと樹里、いい加減にしなさいよ」
朝食の時、樹里の手首に真新しい傷を見つけた母はわかりやすく嫌な顔をして言った。
母のその言葉で隣に座ってトーストをかじっていたテツが樹里を振り返る。
樹里はニットの袖を伸ばして手首を引っ込めた。
朝から頭痛がする。
仕事に行きたくなくてしょうがなかった。
母の入れた苦いコーヒーの味をごまかすように樹里はたっぷりと苺ジャムを塗りたくったトーストを口に運んだ。
「ねえ樹里、俺と賭けしない?」
いやに浮き浮きした声で話しかけて来たテツに樹里は「ん?」と気のない相槌を打った。
「俺が今日一日で何個チョコもらえるか」
「は?」
「はって、もしかして樹里今日が何の日か忘れてる?バレンタインなんですけど」
言われて樹里は壁のカレンダーに目をやった。
確かに2月14日だった。
「俺は10個ね。樹里は何個だと思う?」
「……3個?」
「うっわ。それ酷くね?樹里俺がモテないと思ってんの?」
「さあ。わかんない」
「つか樹里はあげないの?前に言ってた奴に。毎日会ってんだろ?」
朝食の時、樹里の手首に真新しい傷を見つけた母はわかりやすく嫌な顔をして言った。
母のその言葉で隣に座ってトーストをかじっていたテツが樹里を振り返る。
樹里はニットの袖を伸ばして手首を引っ込めた。
朝から頭痛がする。
仕事に行きたくなくてしょうがなかった。
母の入れた苦いコーヒーの味をごまかすように樹里はたっぷりと苺ジャムを塗りたくったトーストを口に運んだ。
「ねえ樹里、俺と賭けしない?」
いやに浮き浮きした声で話しかけて来たテツに樹里は「ん?」と気のない相槌を打った。
「俺が今日一日で何個チョコもらえるか」
「は?」
「はって、もしかして樹里今日が何の日か忘れてる?バレンタインなんですけど」
言われて樹里は壁のカレンダーに目をやった。
確かに2月14日だった。
「俺は10個ね。樹里は何個だと思う?」
「……3個?」
「うっわ。それ酷くね?樹里俺がモテないと思ってんの?」
「さあ。わかんない」
「つか樹里はあげないの?前に言ってた奴に。毎日会ってんだろ?」