サイレント
誰にも言えない許されない想いを吐き出すために作った場だけれど、実際に顔見知りに見つかるとなるとそれはとても危険を伴うというリスクがついて回ることをあまり考えていなかった。

いざとなればホームページ自体はいつでも消してしまえるけれど、それでも早瀬の中の小説のイメージと樹里のイメージを消すことは不可能だ。

そんな樹里の不安をよそに早瀬は尾垣とじゃれあっていた。
ちょっかいをかける尾垣に心底嫌がる早瀬。

二人の背後に野球部の練習風景が広がっているのをあえて見ないふりをして樹里は地面を見つめた。

一に会えなくなって何週間が経っただろう。
たまにこうやって校内で姿は見かけても、二人が言葉を交わすことはない。
当然触れ合うこともない。

1番寒い季節は過ぎたはずなのに樹里の心は凍えて今にも壊れてしまいそうだった。
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