サイレント
「先生俺焼肉食いたいッス焼肉！」

相沢が叫ぶ。相沢と一の間に早瀬が座っていた。樹里のちょうど真後ろが一だ。

「昼から焼肉とはお前若いな」

「はあー？ガッキー若いじゃん！何言ってんの？つーか何で金城先生今日学校にいるんですか？」

「俺が誘ったんだよ。早瀬連れて来てーってさ」

「……マジでうざいから」

早瀬はぴしゃりとはねのけるように言うと運転席のシートを後ろから軽く蹴った。ゴン、と鈍い音が車内に響く。

車は国道に出て隣の市に向かって走り出す。

「焼肉決定？他に食べたい物あるやついないの？」

「私お好み焼きー」

「ラーメン」

「パスタ」

「えーと、バイキング？」

相沢と早瀬が交互に次々とメニューをあげていく。

大体のメニューが出尽くした所で相沢が「イチは？」と一に聞いた。

車に乗ってからずっといるのかいないのかわからないくらい黙りっぱなしだった一が身動きを取る音がして樹里の意識は真後ろの一箇所に集中する。
全神経が一に向けられる。

「別に何でもいい。焼肉以外」

気のない喋り方で一は答えた。
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