サイレント
「焼肉以外ってお前、俺の存在全否定かよ！」

「だって臭いつくじゃん」

「別にジャージについても平気だろ。何カッコつけてんの？」

「俺じゃなくて先生とか。真っ白な上着だし」

ドキリと心臓が跳ねた。
いきなり自分のことを言われるだなんて思っていなかった樹里はうろたえる。

ピュウと隣の尾垣が口笛を鳴らした。

「芹沢お前、それ天然？それともまさか女慣れしてる？」

からかい混じりに言う尾垣の台詞に樹里がドキマギする。
一は何も答えなかった。

どういうつもりで一が言ったのか気になったけれど、ほてる顔を早瀬達に見せたくなくて後ろを振り返れなかった。

「じゃあ飯はラーメンも却下だな。汁飛ぶし。早瀬の言ったお好み焼きにするかー」

尾垣のその一言で決まり、樹里達の行き先はお好み焼きのチェーン店となった。
土曜のお好み焼き屋はそこそこ賑わっていて、樹里達は奥の座敷に通された。

男性陣と女性陣に別れて向かい合って座ると尾垣は「合コンみたいだな」と笑った。

それにすかさず「キモっ」と反応を示す早瀬と尾垣の間には何だか親しげな空気を感じて樹里は何となく疑問に思った。
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表紙・目次

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