サイレント

two

「先生どうしたの？！」

突然驚いたようにそう叫んだ相沢の声に一は鉄板から樹里へと視線を移した。

一同が樹里を見て一瞬動きを止めた。

「金城先生？」

「え、何で泣いてんの？」

賑やかだったその場が一気に静まり返る。

真っ赤に充血した樹里の瞳からはぽろぽろと涙が零れ落ち、一達はもちろん、当の本人である樹里もびっくりしたように慌てて涙を指で拭った。

「もしかしてお好み焼き嫌いだった？」

「場所変える！？店出る！？」

慌てふためきながら相沢と尾垣が樹里に声をかけるが、樹里の瞳から零れ落ちる涙は止まることを知らず、樹里は首を左右に振りながら両手で顔を覆った。

ただ呆然と見ているだけの一の隣で相沢がハンドタオルを樹里に差し出す。
樹里はそれを「ありがとう」と言って素直に受け取り、瞳にあてた。

「あーあっ。芹沢先輩が先生泣かせたー」

泣く樹里に何も言えないでいる一に対してテーブルに肩肘をついた早瀬が不敵な笑顔を浮かべて言った。

「何？芹沢が泣かせたわけ？」

それに反応して尾垣が一を覗き込む。
一はむっとして早瀬を睨み付けた。
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