サイレント
樹里が再び一の姿を目にしたのは雨が止んで久しぶりに太陽を拝むことが出来た日の午後だった。

普段から保健室にばかりいる樹里は反対側の二年のクラスのある校舎へ行くことなど滅多にない。
そして一が保健室に来ることも殆どないと言っていい。

一に貸した医者代はまだ返って来ていなかった。

そして一を家まで送り届けたあの日から樹里は何かに取り付かれたように自分のホームページで小説を書いていた。

それは殆ど実話と言っても過言ではないような内容で、一に対する溢れ出しそうな想いと空想と理想がごちゃまぜになったものだった。

こんなものを書いているだなんて周りに知られたら、恥ずかしさと惨めさで死んでしまう。

それでも書かずにはいられなかった。

書くのをやめたら足が自然と一の家へ向きそうで怖かった。
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