サイレント
相沢と連れだって保健室へ行くと保健室はひっそりと静まり返り、鍵が閉まっていた。

相沢ががっくりと肩を落とす。一も顔には出さないががっかりした。

「しょうがない。帰るか」

相沢の肩を叩いて生徒玄関へと歩を向ける。
相沢はまだ未練があるようで足取りが重かった。

「なあイチ」

「ん?」

下駄箱のスニーカーに手を伸ばして相沢を振り返る。指先にカサリと紙の触れる感触がした。

「お前あの日、金城先生に送ってもらっただろ」

「……え」

「言わないつもりだったけど、一年のあの女の子に聞いた」

「あー。ああ」

直接見られたわけじゃないと知って一はホッと胸を撫で下ろした。

「先生ん家結構近いから」

「へー。初耳」

「そうだっけ」

しらばっくれる一に相沢は少しだけ声をあらげて「そうだよ」と言った。

大きな音を立てて相沢がスニーカーを床にたたき付ける。
一は自分のスニーカーに紙切れが入っているのを見つけてそれを開いた。

手紙だった。
それも、呼び出しの。

玄関を出ようとしている相沢の背中に呼びかける。

「何」

「ごめん。俺担任に呼ばれてたの忘れてた」

すっと目をすがめて相沢が一の顔色を伺う。

「それ、嘘じゃないよな?」

チクリと針を刺されたような痛みが胸に広がる。

「……嘘。本当は、」
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