サイレント
two
春休みの半分は自分の部屋でビールを飲みながら過ごしていた。
真っ赤なベッドカバーに沈み込み、好きな音楽を流しながらビールを飲む時間は樹里にとって落ち着く時間で、春休みで一に会えない寂しさを埋めるように飲んだくれていた。
「樹里ー。俺もまーぜーてー」
いつものごとく朝からビール片手につまみを口にしていると、ひょっこりとテツが顔を出した。
手にはコンビニ袋がぶら下げられていて、テツは中からワインや酎ハイを取り出す。
大学生のテツは一ヶ月近くある長い春休みの間バイトに明け暮れていたようで、顔を合わせるのは久しぶりだった。
「樹里最近彼氏んとこ行ってないみたいじゃん。別れた?」
「……別に。単に向こうが忙しいだけ」
部活に戻った一は毎日練習があり、春休みが明けたら三年だということもあって勉強にも身を入れなくてはいけない時期だった。
それに、一の母に顔を見られてしまった手前、一の家には怖くて近寄れない。
学校で一の母と顔を合わせないなんて確率は100%と言い切れるものでもないのだ。
真っ赤なベッドカバーに沈み込み、好きな音楽を流しながらビールを飲む時間は樹里にとって落ち着く時間で、春休みで一に会えない寂しさを埋めるように飲んだくれていた。
「樹里ー。俺もまーぜーてー」
いつものごとく朝からビール片手につまみを口にしていると、ひょっこりとテツが顔を出した。
手にはコンビニ袋がぶら下げられていて、テツは中からワインや酎ハイを取り出す。
大学生のテツは一ヶ月近くある長い春休みの間バイトに明け暮れていたようで、顔を合わせるのは久しぶりだった。
「樹里最近彼氏んとこ行ってないみたいじゃん。別れた?」
「……別に。単に向こうが忙しいだけ」
部活に戻った一は毎日練習があり、春休みが明けたら三年だということもあって勉強にも身を入れなくてはいけない時期だった。
それに、一の母に顔を見られてしまった手前、一の家には怖くて近寄れない。
学校で一の母と顔を合わせないなんて確率は100%と言い切れるものでもないのだ。