サイレント
「家庭教師とか?」

「家庭教師なら家で教えるでしょ」

「じゃあ親戚のお姉さん」

「ええー?」

祥子が二つ目の干し梅を口にしてもまだ議論は続いていた。

「だいたい仲良さそうって勉強してただけでしょ?」

「そうなんだけどー。でも違うの」

「どう違うの?」

祥子は思い切って干し梅をまるごと口に放り投げた。

「なんてゆーか、芹沢って普段うちら女子に興味ないじゃん?それがその女の人を見る時は笑ってんの。優しいっつーか」

思わず噎せそうになった。ぐっと堪えて唾を飲み込み、咳ばらいでごまかす。

あの芹沢が?

「えー。それってその女と芹沢ができてるってコト?ねえ、祥子どー思う?」

美佐子がいきなり祥子を振り返る。
美佐子は時折こうやって不意にキラーパスを出してくるので油断しているとドキリとさせられる。

「え?わかんない。でも、歳離れすぎじゃない?」

何も考えていなかったので普通の答えしかできなかった。いつもならもっと気の利いたことを答えられるのに。

美佐子が残念そうな顔で唇を尖らす。

「あーあ。誰か芹沢の前の学校に知り合いとかいないわけー?」

「そんなに気になるなら美佐子直接芹沢に聞いてみたら?」

祥子は先程のお返しにそう言った。
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