サイレント
three
「ご希望の金額を入力して下さい」
仕事が終わってすぐにスーパーのキャッシュコーナーへ駆け込んだ樹里はATMの音声アナウンスにしたがって金額を押した。
キャッシュカードと一万円札の束が出て来ると樹里はそれを素早く封筒に入れて外へ出た。
毎月給料が振り込まれる口座から七万、それから大学生の頃から親の仕送りやバイト代をこつこつ貯めていた郵便局の口座から三万の計十万円をおろした。
一気にこれだけの額をおろすことなんて滅多にない。
樹里は車に乗り込むとバッグから鍵を取り出した。
プロ野球チームのロゴの入ったキーホルダーのぶら下がった鍵を握りしめ、反対の手でエンジンをかける。
こんなこと、してもいいのだろうか。
そう思いつつ、樹里は一の家へと向かった。
あまり目立たないように一旦家に寄って車を置き、私服に着替えてから徒歩で一の家へ行った。
キーホルダーのついた鍵を鍵穴に入れ、ゆっくりと回す。
それだけのことにすごい気力を要した。
他人の家に、それも一の家に鍵を使って入るなんてことは今日まで想像もしなかった。
仕事が終わってすぐにスーパーのキャッシュコーナーへ駆け込んだ樹里はATMの音声アナウンスにしたがって金額を押した。
キャッシュカードと一万円札の束が出て来ると樹里はそれを素早く封筒に入れて外へ出た。
毎月給料が振り込まれる口座から七万、それから大学生の頃から親の仕送りやバイト代をこつこつ貯めていた郵便局の口座から三万の計十万円をおろした。
一気にこれだけの額をおろすことなんて滅多にない。
樹里は車に乗り込むとバッグから鍵を取り出した。
プロ野球チームのロゴの入ったキーホルダーのぶら下がった鍵を握りしめ、反対の手でエンジンをかける。
こんなこと、してもいいのだろうか。
そう思いつつ、樹里は一の家へと向かった。
あまり目立たないように一旦家に寄って車を置き、私服に着替えてから徒歩で一の家へ行った。
キーホルダーのついた鍵を鍵穴に入れ、ゆっくりと回す。
それだけのことにすごい気力を要した。
他人の家に、それも一の家に鍵を使って入るなんてことは今日まで想像もしなかった。