サイレント
今度こそ打ちのめされて祥子は階段を下りた。

足取りが重い。こんなことなら大人しく母親の言うことをきいて部屋の掃除でもしておけばよかった。

大悟と一緒に塾へ通って夏休みは気晴らしにお祭りへ行ったり、花火をしたり。

そうしていれば何もこんなわけのわからない暗い気分にならずに済む。

今からでも遅くない。

これ以上芹沢に関わるのをやめて、大悟と青春を満喫することにしよう。

それが最善だ。

たとえ「ごっこ」でも、祥子が平和でお気楽な人生を続けるにはそれしかない。

突然やってきた転校生が気になるのは物珍しいからで、しかもかなり年上の彼女がいるという衝撃的な事実を知ってしまったからで。

その他に特別な理由なんてありはしない。
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