サイレント
狭い玄関には小さなスニーカーと大きなスニーカーが並んでいた。

樹里はそのスニーカーの横に黒いパンプスを並べ中に入る。玄関から入ってすぐの所がリビングダイニングになっていた。

樹里は誰もいないその部屋を見回す。
キッチンの上にはカップラーメンやコンビニ弁当の空容器が山盛りになっており、リビングのソファの上には脱ぎ散らかされた服がいくつも積み重ねられていた。

「6時には帰るから家で待ってて」

そう言って一は樹里に家の鍵を渡した。
説明は家に帰ってからするから、とそれだけを言い残して保健室から出ていく一を引き止めることもできずに、そして今に至る。
両親はそれぞれ仕事なのだろうか。家の中には子供達のものが溢れ、あまり大人の生活している気配はなかった。

一が帰って来るまで約30分。とりあえず樹里は絨毯の空いたスペースに座った。

することがなく、勝手にテレビをつけてみる。

そうやってしばらく夕方の地方ニュースを見ていると、誰もいないと思い込んでいた二階から人が下りてくる足音が聞こえて来た。

びっくりした樹里は階段を振り返り、身を固くした。

トントンと軽快なリズムで階段を下りてくる音が近づくにつれ、焦りと不安が大きくなる。
< 25 / 392 >

この作品をシェア

pagetop