サイレント
冷たい金属の感触と、樹里の柔らかい指の温かさがアンバランスだった。

そのまま樹里を壁際まで追い詰める。

キスをするみたいに顔を寄せれば樹里は悔しそうに目を逸らした。

「……そんな顔にごまかされたりしないんだから」

「俺は何もごまかしてないんだけど」

「……」

樹里の細い腰に腕を回して抱きしめた。
思ったとおり柔らかい髪が一の頬を擽る。

「風邪うつしたらごめん」

一がそう言うと樹里は掠れた声で「ずるい」と呟き、一の背中に爪をたてた。
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