サイレント
加藤は怒りながらもスカートのポケットから携帯電話を取り出して「携帯教えてよ。持ってるんでしょ?」と聞いてきた。
加藤の携帯にはふわふわやピンクやクマ等のストラップがじゃらじゃらとぶら下がっている。
「まさか彼女以外の女に番号教えない主義とかダサいこと言わないよね?」
加藤の安い挑発にムッとして、ズボンのポケットの中の携帯に手を伸ばす。
伸ばしかけて思いがけず手が止まった。
ズボンのベルトに手を止められたと言った方が正しい。
樹里は一の誕生日プレゼントに「身につけられるもの」としてベルトを選んだ。
それも安物ではなくGUCCIのベルト。
中学の制服に不釣り合いなそれはそこだけ樹里の息がかかったように主張していた。
「浮気防止」と言って一の腰にそれを巻き付けた樹里の淋しげな瞳を思い出す。
「芹沢?」
加藤が不思議そうに一の自転車のカゴを掴んだ。
「悪い。やっぱ教えらんないから用事ある時は大悟の携帯から連絡して」
「え?」
「じゃあな。バイバイ」
加藤の手を振り切るように一は自転車を走らせた。
生温い風を切って突き進む。
前だけを、
樹里だけを目指した。
加藤の携帯にはふわふわやピンクやクマ等のストラップがじゃらじゃらとぶら下がっている。
「まさか彼女以外の女に番号教えない主義とかダサいこと言わないよね?」
加藤の安い挑発にムッとして、ズボンのポケットの中の携帯に手を伸ばす。
伸ばしかけて思いがけず手が止まった。
ズボンのベルトに手を止められたと言った方が正しい。
樹里は一の誕生日プレゼントに「身につけられるもの」としてベルトを選んだ。
それも安物ではなくGUCCIのベルト。
中学の制服に不釣り合いなそれはそこだけ樹里の息がかかったように主張していた。
「浮気防止」と言って一の腰にそれを巻き付けた樹里の淋しげな瞳を思い出す。
「芹沢?」
加藤が不思議そうに一の自転車のカゴを掴んだ。
「悪い。やっぱ教えらんないから用事ある時は大悟の携帯から連絡して」
「え?」
「じゃあな。バイバイ」
加藤の手を振り切るように一は自転車を走らせた。
生温い風を切って突き進む。
前だけを、
樹里だけを目指した。