サイレント
校庭には光がなく漆黒の闇に包まれていた。

「芹沢は元気ですか?」

「えっ」

驚いて心臓が口から飛び出すかと思った。

尾垣を見下ろし目を見張る。

「……幸子が言ってましたよ。金城センセーと芹沢が付き合ってるって。まだ続いてます?それとももう別れました?」

「何言って……、ありえない。生徒ですよ?しかも中学生って」

自分で言ってて胸が痛んだ。ありえない。
まさにその通りなのに、ありえないことをしてる。

尾垣はそんな樹里の内心を嘲笑うかのようにクスクスと声を漏らした。

吸いかけのタバコを地面に押し付けて火を消すと樹里の腕を引いた。

手加減なしで。
逃げる予知なんてなかった。

「嘘が下手ですね。金城センセーは」

「離してっ」

尾垣の腕の中で身じろぎするが、がっしりと腰と背中に回された腕はびくともしない。

「芹沢は潔癖っぽいからな。俺がセンセーに手出したって知ったら俺のこと殺しかねないな。そんで金城センセーのことも一生許さないんだろーな」

アルコールの香りが混じった尾垣の吐息が樹里の耳にかかる。

背筋に悪寒が走った。

気持ち悪い。キモチワルイ。

助けてハジメくん。
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