サイレント
金城樹里はふるふると頭を振ってから申し訳なさそうに口を開いた。

「あの、離婚した……んじゃないんですか?」

「え?ああ、まだ。離婚届に嫁がハンコ押してくれなくて、いわゆる別居状態ってだけで」

「……身体の具合は?もう大丈夫なんですか?」

陽平は感心して思わず笑ってしまった。
金城樹里が困ったように首を傾げる。

「こりゃまいった。あいつ。一の奴、先生に何でも話してんだ」

あの一が、と付け足す。

「そーいえばこないだはクラスメイトの女の子が俺の病室まで洗濯物を持って来たな。あいつ外じゃ意外と甘えた奴なのかな」

「え……?」

「ん?ああ、今の学校のクラスメイトだから先生知らないか。あいつ学校で女の子と普通に仲良くするタイプなんですか?俺はてっきり硬派であんまり女子と話さないタイプだとおもってたからびっくりして」

「……さあ」

わかりやすいくらい樹里の顔が陰った。

どうやらクラスメイトのことを知らなかったらしい。

「先生は、ずっと一と付き合うつもりですか?そろそろ結婚のこと親から急かされる年頃でしょう?一はガキだからそこんとこあんまりわかってないかもしれないけど」
< 266 / 392 >

この作品をシェア

pagetop