サイレント
「私、ハジメくんのそういう真っ直ぐで強くて、汚されない潔癖さが本当に好き。大好き」

うっとりと川面を眺めながら樹里が言う。

自分のことを言われてるとは到底思えないほどの絶賛に一はむず痒い気持ちになる。

「買い被りすぎ。俺は人よりコンプレックスが多いから人より上を目指してるだけだし。普通にしてられる奴らのがうらやましい」

「コンプレックス?」

「うん。インド人とのハーフってさ、それだけでいじめの対象っていうか、目立つし」

これを言葉に出して言うのは初めてだった。

気にしていると思われたくなくて友達といる時も話題に出さないようにして、自分を見つめる視線はことごとく無視するようにする癖がいつの間にか染み付いていた。

「……ハジメくんはそんなの気にしてないと思ってた」

「気にしてないふりしてたし」

「そうなんだ……」

明らかに日本人じゃない顔をした母親が授業参観に現れることがどんなに嫌だったか。
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