サイレント
一は赤、緑、黄色と様々な色に照らされて行く樹里の横顔を見つめた。

くるんとカールした睫毛が揺れる。

樹里はわざと上を向いたまま何かを我慢しているようだった。

花火の前に樹里が誰と会って何を話して、何を考えていたかなんて一には到底わからない。

当たり前のことだけれど、自分と会っている時以外の樹里を知らない。

一が中学に入るより以前の樹里がどんなだったのかも、もちろん。
誰と付き合って、どんな風に過ごしたのか。

樹里にとって一との付き合いなんて、子供のおままごとみたいなものかもしれない。

自転車しか乗れない。親からの小遣いしか持っていない。
義務教育も終わってない。

樹里からしたらデメリットだらけだ。

「先生って、変わってる」

普通なら、こんな面倒な相手、好きになったりしないだろうに。
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