サイレント
樹里は一の声を聞き逃さずに笑った。

「そ?ハジメくんの方が変わってるよ」

「いやいや。全然だし」

「普通、ハジメくんみたいな男の子、こんなおばさんにひっかかったりしないよ」

まるで今考えていたことを全て聞かれていたような言葉にはっとした。

「今でも、嘘みたい」

いつの間にか花火が消えて静かになっていた。

終わったのではなく、休憩時間らしい。

屋台で買っただろう食べ物の匂いがそこら中に漂っていた。

「ハジメくん。私たち、これからも一緒にいられるよね?」

不安げに樹里が言う。

その瞳は縋るように一を捉えて離さない。

「いるよ。何、急に」

「何って、こともないけど……ハジメくんは家族と私と、どちらか片方しか選べないとしたら、やっぱ家族を選ぶかな、と思って」

「え?」

「親がいないと……ダメな年齢でしょ、まだ」
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