サイレント
「子供扱いすんなよ」

樹里の大人ぶった言い草にムッとした。

花火が再開されて轟音が鳴り響く。

樹里は何も言い返すことなく再び空を見上げた。
そんな樹里にイライラして意地悪な気持ちにさせられる。

すぐに泣くくせに。
たまに大人ぶって一を子供扱いする。

子供に振り回されているのに、好きなくせに。

一は何も言わずに立ち上がるとその場を離れた。

このまま戻らなかったら樹里はどうするだろう。

樹里の車で来ているのだから、戻らないわけにはいかないけれど、少しだけ困らせてみたかった。

自分を必死に探す樹里を見たかった。

万が一本当にはぐれても、いざとなれば携帯で連絡を取ればいい。

そう思って一は来た道を戻った。
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