サイレント
バックミラー越しに大きな花火が打ち上がるのが見えた。

多分これがラスト。

重力に逆らえきれず、ゆるゆると落ちてゆく火花が虚しく目に焼き付いた。

せっかくの花火も一人で見たんじゃ悲しいだけだった。

車の中のむっとした空気を
出すために窓ガラスを半分程開く。

ちょうどその時、助手席に置いてあった携帯が鳴りだした。

「もしもしっ!」

樹里は慌てて電話に出た。

『あっ、金城先生?』

受話器から聞こえて来た声にがっかりする。

「……尾垣先生」

『……今、がっかりしました?』

「や、別にそんなことはないですけど」

『ふーん……。まあ、いいや。それより金城先生、せっかくの花火なのになんで一人?』
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