サイレント
尾垣と一が鉢合わせするという最悪の事態だけは免れたい。

「……尾垣先生の連れって女の子ですか?」

適当に話題を振って尾垣を追い出すタイミングを見計らおうと思った。

「うん。よくわかりましたね」

「大概混むのは女子トイレだから」

「おー。成る程。っても妹ですけど」

「妹?仲良いですね」

「仲……いいのやら悪いのやら。歳が離れてるからキョウダイって感じはあまりしないんすけど」

尾垣は苦笑いで窓の外を見つめた。

渋滞はなかなか解消されず、駐車場はまだ混雑していた。

一はどこで何をしているんだろう。

これじゃあ一体何のためにはるばるこんな所まで来たのかわからなかった。

一とは一緒にいられないし、知り合いには出くわすし。

それならどこか近所でこっそり会う方がよかった。

「……なんか元気ないですね、金城先生」

携帯のライトが点滅し、メール着信音が鳴る。
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