サイレント
突然人だかりの方から声がした。

「お前何やってる!!」

制服を着た警官が人だかりの中から現れ、樹里の目の前で一がその警官に取り押さえられた。

「大丈夫ですか!?」

誰かが尾垣に駆け寄る。

「ったく祭だと必ず喧嘩だ。お前、ちょっと来てもらうぞ!」

そう言って一を引っ張った警官が一の顔を見て青ざめた。

「お前血っ!」

それを聞いて樹里も初めてまともに一の顔を見た。
頭から大量の血を流した一と目が合う。

一の視線を追って警官も樹里を振り返った。

「君、この子の知り合い?」

「……あ」
「違う!」

樹里が言葉を発する前に一が否定した。

「何だ。違うのか?」

問いただす警官に一は樹里から目を逸らす。

「その人はそこに倒れてる奴の彼女……」

どんな顔をして一がそう言ったのか、樹里からは見えなかった。

そのまま尾垣と一は待機していた車に乗せられる。

二人を車に乗せた警官が樹里を振り返った。

「あなたも一緒に来て。車?」

「あ、はい」

「じゃあ、自分の車でついてきて」
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