サイレント
「大丈夫?」
と樹里がそう一に尋ねた時尾垣が処置室から出てきた。
「……なんだ。お前らもう駄目なんじゃん」
一と樹里の二人を見比べて尾垣は笑った。
腹が立つ。
駄目だとか駄目じゃないだとか他人にわかるわけがない。
樹里とは何度も別れかけて駄目になりかけたけれど、その分絆は強くなっている。
今更こんなことでいちいち皹が入ったり壊れたりしない。
「お待たせ」
突然冷たく濡れたハンカチを頬にあてられ一はびくりと体を強張らせた。
「ガーゼの部分は冷やせないけど、少しはマシでしょ?」
心配そうに自分を覗き込む樹里の瞳が揺れていた。
ハンカチを持つ樹里の手に自分の手を重ねる。
「大丈夫だよ。このくらい」
「……ごめんね」
「何で先生が謝んの?」
樹里が傷ついたような顔をした。
少しだけ開かれた車の窓ガラスから流れ込む蛙の声が煩いほど響いていた。
と樹里がそう一に尋ねた時尾垣が処置室から出てきた。
「……なんだ。お前らもう駄目なんじゃん」
一と樹里の二人を見比べて尾垣は笑った。
腹が立つ。
駄目だとか駄目じゃないだとか他人にわかるわけがない。
樹里とは何度も別れかけて駄目になりかけたけれど、その分絆は強くなっている。
今更こんなことでいちいち皹が入ったり壊れたりしない。
「お待たせ」
突然冷たく濡れたハンカチを頬にあてられ一はびくりと体を強張らせた。
「ガーゼの部分は冷やせないけど、少しはマシでしょ?」
心配そうに自分を覗き込む樹里の瞳が揺れていた。
ハンカチを持つ樹里の手に自分の手を重ねる。
「大丈夫だよ。このくらい」
「……ごめんね」
「何で先生が謝んの?」
樹里が傷ついたような顔をした。
少しだけ開かれた車の窓ガラスから流れ込む蛙の声が煩いほど響いていた。