サイレント
「もうすぐ私立の受験だね……」
「あ、はい」
「どこ受けるの?」
「え、あ、私立はO高です」
答えながら祥子は目の前のカプチーノを啜った。
どこかいいお店知らない?と芹沢の彼女に尋ねられてフアミレスとスタバしか思い浮かばなかった自分が悲しい。
祥子達は図書館から少し離れたスタバで何故か二人向き合っていた。
「加藤さん、だっけ」
「はい。えっとあなたは」
「樹里」
「樹里さん……」
祥子が呟くと樹里はクスクスと笑った。
「ハジメくんには先生って、呼ばれてるんだけど」
手持ち無沙汰に携帯をいじっていた祥子は手を止めた。樹里を見つめる。
「先生だったの。私。中学の保健室の。ハジメくんは、生徒……だよね。どう考えても」
樹里の瞳が曇った。
「でも、付き合ってるんですよね?」
祥子が聞くと樹里は静かに頷いた。
かなり年上で、まさかとは思ってたけど、本当に先生だったなんて。
「樹里さんが、先に芹沢を好きだったって聞きましたけど」
樹里は祥子の言葉に驚いたように目を見開いた。
「あ、これ私しか聞いてないし安心して下さい。芹沢自分のこと学校で話さないし、私も誰にも言ってないし」