サイレント
「イッたぁ……」

咄嗟についた掌が擦りむけた。血が滲み、砂利が掌にくっついている。

傷が風にあたるとヒリヒリした。

「何やってんだよ」

芹沢の呆れたような声が頭上に降ってきて祥子は見上げた。

芹沢は祥子の両腕を引っ張り、立ち上がらせた。

「……彼女と、別れたんじゃない。俺が一方的に、捨てられたんだ」

「え?」

「俺のこともう好きじゃないって……合格のこと電話で報告したらそう言われて、前の学校に行ったけど、結構前に退職してるって……」

祥子の両腕を掴んだままの芹沢の手は震えていた。

きっとまだ現実を受け入れられていない。

信じたくない。芹沢はそんな顔をしていた。

「俺が悪いのかな。俺が悪かったから先生は、俺のこと捨てたのかな」

芹沢は祥子に助けを求めていた。

祥子は震える芹沢の手を擦りむけた手で握り返す。

「芹沢は何も悪くないよ。だって受験勉強あんなに頑張ってたじゃん」

「でもそれって俺のことだろ。先生は関係ない。会えなくて寂しい思いさせた。先生、さみしがりなんだ。一人でいられないんだ。それ、わかってたのに俺」
「違うっ!」
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