サイレント
祥子は大きく叫ぶと無我夢中で芹沢を抱きしめた。
芹沢の背中に腕を回し、力を込める。

「彼女だって芹沢が受験上手く行くの願ってた!だから何も言わなかったんだよ。邪魔したくなくて。だから芹沢がそのことを後悔する必要なんて全然ないから!」

芹沢は祥子の腕の中でぴくりとも動かずじっとしていた。
ぬいぐるみか何かを抱きしめているような感じだった。

「芹沢は彼女のこと大事にしてたんでしょ?だったらもう、いいじゃん。そんな、死んだような顔しないでよ……」

芹沢はいつも余裕で、人のこと馬鹿にしてて、何考えてるかわからなくて、気になってしょうがない。
そういう男の子で。

ずっとそんな芹沢でいて欲しい。

祥子が捕まえたくてもひょいって簡単に逃げてしまうような。

「私、芹沢のこと大好き。好きだよ。だから、こんな芹沢見てらんないよ」

まさか本人目の前にして言う日が来るだなんて思ってもみなかった。

永遠に告白出来ずに終わると思っていた。
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