サイレント

three

一は乗ってきた自転車に跨がり樹里の車を追った。

樹里の今住んでいるアパートが病院からさほど離れていないことは以前病院の受付の人がこっそり教えてくれた。

樹里は一と別れ、住まいまで変えてしまった。

それほどまでして一との接点を無くしてしまいたかったと、そう受け取ってこれ以上追い掛けるべきではないのかもしれない。

樹里の車は田舎道を何度か曲がり、四階建てのアパートの駐車場に停まった。

車のスピードに追い付こうと必死だった一はさすがに息を乱していた。

自転車に跨がったままぜえはあと荒い呼吸を整える。額からは汗が流れた。

バタンと車の扉が閉まる音がして、樹里がこっちへ歩いてくるのが見えた。

樹里は明らかに怒っていた。

こっちへ歩いてくる樹里の姿がぐにゃりと歪む。
そして視界が真っ暗になった。
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