サイレント
「秘密を知ってる」なんて、全くのあてずっぽうだった。それがまさか、本当に秘密があったとは。

それもかなり、重大な秘密らしい。

「集合ー!!」

新しくキャプテンになった同級生の山田の掛け声で練習は終わりを告げた。
三年生のキャプテンとは違う声が自分達にあれこれ指図するのにはまだ慣れない。

一は相沢の足をわざと引っ掛けてコケさせると自分は素早く皆の輪の中へと入って行った。

涼しい風が一の熱を急激に奪っていく。
今日もまた、家に帰らなくてはいけない。

一は弟しかいない散らかった家の中を思い出し、憂鬱になった。

一はただの中学生だ。朝は寝坊したいし、勉強もそれなりにする。放課後はくたくたになる程部活をして、家に帰ったらすぐにご飯を食べて風呂に入って、テレビを見て、それからぐっすり眠りたい。

なのにここ最近の一はそんな普通の生活とは無縁の暮らしを強いられている。

少ないお金でコンビニへ行き、安い弁当やパンを買う。慣れない洗濯もしなければいけないし、弟の世話も、全て一がやらなければならない。

正直うんざりしていた。
何で俺がこんな目にあわなきゃならないんだ。
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