サイレント
樹里があの子供と別れたことは樹里がここへ引っ越す時に聞いた。
それ以来樹里は以前の樹里とは変わってしまった。
どこがどう変わったのか上手く説明できないけれど、笑顔を見せても作りものみたいで、どこかからっぽで、血が通っていないみたいに見えた。
全てがどうでもよくて、いつ死んでも構わないって思っていそうで。
リストカットの常習犯だった樹里のことだから本当にある日突然この世からいなくなるんじゃないかと本気で心配したこともあった。
樹里に以前のような人間らしさを取り戻して欲しいとテツなりに出来ることはしてきたつもりだけれど、弟であるテツにそれを実現するのは不可能そうだった。
家事を一通りこなして樹里と昼食を取って、テツは樹里のアパートを後にした。
夏の日差しがじりじりと照らす。
8月に入るとやはり暑さが違った。
駐車場に停めてあった自分のバイクに跨がってヘルメットを被ろうとして、ふとテツは植木へ目を向けた。
高校生くらいだろうか。大きめのTシャツに黒いパンツ姿の少年がアパートの前の植木に腰掛けていた。
誰かを待っているのかその少年は何をするでもなくただぼんやりとしていた。
それ以来樹里は以前の樹里とは変わってしまった。
どこがどう変わったのか上手く説明できないけれど、笑顔を見せても作りものみたいで、どこかからっぽで、血が通っていないみたいに見えた。
全てがどうでもよくて、いつ死んでも構わないって思っていそうで。
リストカットの常習犯だった樹里のことだから本当にある日突然この世からいなくなるんじゃないかと本気で心配したこともあった。
樹里に以前のような人間らしさを取り戻して欲しいとテツなりに出来ることはしてきたつもりだけれど、弟であるテツにそれを実現するのは不可能そうだった。
家事を一通りこなして樹里と昼食を取って、テツは樹里のアパートを後にした。
夏の日差しがじりじりと照らす。
8月に入るとやはり暑さが違った。
駐車場に停めてあった自分のバイクに跨がってヘルメットを被ろうとして、ふとテツは植木へ目を向けた。
高校生くらいだろうか。大きめのTシャツに黒いパンツ姿の少年がアパートの前の植木に腰掛けていた。
誰かを待っているのかその少年は何をするでもなくただぼんやりとしていた。