サイレント
日曜にどうしてもじっとしていられず、樹里の家の前まで行ったけれど、インターフォンを押す勇気が出ずにそのまま帰って来た。

一体何をやっているんだろうと、たまに自分で自分が嫌になる。

一は携帯電話を開いて弟に電話をかけた。
小学生だった拓海も今では中学生。

声変わりをして低くなった拓海の声が聞こえて来た。

「あ、タク?お前今日部活?」

『ううん。男バスは今日から三日間休み』

「あーそ。じゃあさ、家来てくんねー?風邪引いたから出来れば薬買ってきて欲しいんだけど」

『うーん。わかった』

拓海は意外にあっさりと了解してくれた。
少し安心して眠りにつく。

病気の時は無性に心細くなる。

樹里は一人で体調を崩したらどうするんだろうか。
誰か駆け付けてくれる人間がいるんだろうか、と心配になる。

あまり友達もいなさそうだし。

何であんなにはかなげなんだろう。

はかないというより、孤独。

いついなくなってもおかしくない存在。
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