サイレント
薄い色のだしに、葱と溶き卵を浮かべたうどんは美味しかった。

熱い麺が喉を下っていく感触がリアルに伝わってくる。

「じゃあ俺はそろそろ帰るけど。また何かあったら電話して。それからたまにはこっちにも来てね。ママ寂しがってるから」

拓海は肩からバッグをかけると立ち上がり、そう言って玄関先に出た。

「ああ。悪かったな」

「治らないようだったら早めに病院行った方がいいよ」

「わかってる」

「あと、あの先生によろしく」

拓海はにっと笑って言った。そのまま玄関がパタンと閉まってしまう。

一はうどんを啜った。

机の上の風邪薬の箱を人差し指でとんとんと叩く。

市販のCMなんかでよく見る薬。

うどんを食べ終えると一はその薬を持って立ち上がった。
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