サイレント
翌日、一は昼休みに保健室へ向かった。
目立たないようにさっと中に入り、扉を閉める。

中には樹里の姿がなかった。そのかわりに一年のやけに明るい髪をした女がベッドに横たわってファッション雑誌を眺めていた。
女が一に気付いて顔をあげる。

薄く整えた眉が妙にキツイ印象を与える。
樹里も眉を細く整えているが、曲線がなだらかなのでまだ柔らかいイメージがある。

女はすっと一の顔から足元までを流し見ると、興味がないと言わんばかりに再び雑誌に視線を落とした。

たとえ樹里がすぐに戻って来たとしても、他に人がいるんじゃ話せない。
一は出直そうと踵を返した。
< 38 / 392 >

この作品をシェア

pagetop