サイレント
小説のタイトルも「無題」となっていて、中身がどんなものかもわからない。

パスワード入力画面に一は何度か適当な数字を入れてみた。

もし、作者が本当に樹里だったとしたらと仮定して。

自分の誕生日。違う。
樹里の誕生日。違う。

初めて樹里が家へ来た日。違う。

高校受験発表の日。違う。

もしかしたらローマ字かもしれない。

自分と樹里の名前をそれぞれローマ字表記で入力してみたり、名前と誕生日を組み合わせてみたりするが、どれも違った。

パスワードにそんな意味をこめていないのか、やはり全く別人が作ったものなのか。

一はパスワードを考えることを諦めて夕飯に手をつけた。

時間が経ったせいで少し冷めてしまっていたけれど、味は問題ない。

そろそろ父も帰ってくる頃だった。
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