サイレント
最後のページにたどり着いたのは明け方だった。

一は眠たい目を擦りながら天井を見つめた。

ずっと携帯の小さい画面を見続けていたせいで酷く疲れている。

結局、一の知りたかったことは最後まで書かれていなかった。

物語は主人公の女が一方的に少年の前から姿を消した所で止まっていた。

「何だよ、それ」

書くのも放棄したってことか。

なら、もう。

一は起き上がり、デニムとTシャツに着替えると水をコップ一杯飲んで家を出た。

自転車に乗り、樹里のアパートを目指す。

午前4時。

夏だとはいえ、風は少し冷たく、半袖の一には肌寒い。

ひたすら誰もいない道路を突き進んだ。
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