サイレント
地方の大学の看護学部を卒業した樹里は卒業して地元の中学で養護教諭として採用された。今年で三年目になる樹里の仕事ぶりは馴れたもので、たまにさぼりにやってくる生徒達の扱いにも慣れていた。

なにより、授業を受け持つ教師たちとは違い、気楽な面もあり、仕事自体に不満は抱いていない。

生徒達のメンタルヘルスだとか何だとか、いろいろと口うるさく騒いでいる時代ではあるが、本当に問題のある子どもたちの場合、樹里が出るまでもなく、市の児童福祉課の専門員等が関わってくれるので、実際樹里がすることと言えばたまにやってくるけが人の手当てと、さぼりの生徒の話し相手くらいのものだった。

けれど、樹里はここのところものすごく今の仕事を辞めたくなることがある。

辞めたいと悩み、朝、学校に向かうのも憂鬱で、自分の存在を全否定したくてたまらなくなる日があって、そんな日にはもう自分を傷つけることを我慢できずに樹里は自らを痛めつける行為を繰り返す。

保健室はそんな行為をするのにうってつけの場所だった。

自分で切りつけた腕を自分で消毒し、手当てするなんて馬鹿げている。

けれどどうしてもやめられない。
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