サイレント
一はズボンのポケットを探った。家の鍵を取り出し、樹里に差し出す。
「俺、また部活で遅くなるけど、弟は早く帰ってるから」
「……うん」
樹里はどこか苦しそうに笑う。
ざわざわ。ざわざわ。
何かが、胸の内でざわめいていた。
今朝の天気予報で台風が近づいていると言っていた。
今夜には本州に上陸し、天気が荒れる。
風がどんどん強くなって来ていた。
台風は天気予報の通り、どんどん北上してきて、部活をし始めて一時間くらいするとかなり風が強くなっていた。
キャッチボールの球が流されて必要以上に走った。
何故か皆うきうきしたような顔ではしゃいでいる。
台風ごときでうきうきできる自分たちは本当にガキなんだな、と一は実感する。
「イチ、お前さあ、昼休み何しに保健室に行ってたわけ?」
ユニフォームについた土をはらっているとやけに真面目な顔をした相沢がそう尋ねて来た。
一はぎくりとして手を止める。
「いや、別に。こないだ風邪で帰った時に家まで送ってもらってさ、そん時に先生の車に……忘れ物してたみたいで」
「俺、また部活で遅くなるけど、弟は早く帰ってるから」
「……うん」
樹里はどこか苦しそうに笑う。
ざわざわ。ざわざわ。
何かが、胸の内でざわめいていた。
今朝の天気予報で台風が近づいていると言っていた。
今夜には本州に上陸し、天気が荒れる。
風がどんどん強くなって来ていた。
台風は天気予報の通り、どんどん北上してきて、部活をし始めて一時間くらいするとかなり風が強くなっていた。
キャッチボールの球が流されて必要以上に走った。
何故か皆うきうきしたような顔ではしゃいでいる。
台風ごときでうきうきできる自分たちは本当にガキなんだな、と一は実感する。
「イチ、お前さあ、昼休み何しに保健室に行ってたわけ?」
ユニフォームについた土をはらっているとやけに真面目な顔をした相沢がそう尋ねて来た。
一はぎくりとして手を止める。
「いや、別に。こないだ風邪で帰った時に家まで送ってもらってさ、そん時に先生の車に……忘れ物してたみたいで」