サイレント
我ながら呆れる程下手な嘘だった。相沢がやや険しい顔で一を見ている。

腋の下に変な汗をかきそうだった。

「お前、おいしい奴だな」

「……は?」

「俺も風邪ひこうかなー。熱計ってもらいてえー」

一は夢見がちな瞳で呟く相沢にぞわりと寒気がした。思春期とはきっと薄ら寒い何かで出来ている。
一も彼女だとか好きな人だとかそんなことを考えないわけでもないが。
相沢のように口に出せる程我を忘れたりしないし、プライドが許さない。

相沢は結局部活が終わるまで恥ずかしい妄想を一に語っていた。
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