サイレント
放課後は部活へ向かう仲間を避けるように教室を飛び出し、一人帰路につくことが日課になった。
しかし、更衣もとうに過ぎて、マフラーなしじゃ登校できないような季節になった頃、ついに相沢が一に怒ったような顔でやってきた。
「おい、イチ。お前なんで部活こねえんだよ。山田も皆も気にしてるぞ」
自分の席でぼうっとしていた一はゆっくりと前に立ちはだかる相沢を見上げた。
まるで遠い世界の人間を見る気分だった。
「ああ、ごめん。退部届まだ出してなかったな」
「はあ?!何だよそれ!退部って!」
相沢が声を荒げた。窓の外を雪がちらちらと舞う。
「いや、うちの母親がさ、最近身体の調子悪くて、弟の世話とかも俺がやんなきゃいけなくて、正直部活どころじゃねーんだ」
我ながら嘘が上手くなったと思う。まあ、あながち嘘でもないのだけれど、本当でもない。
「まじかよイチ。何でそんな大変なこと俺らに黙ってたんだよ……」
「気い使わすの嫌だし」
「何言ってんだよ友達だろ?!」
「ん。悪い。まあ、山田には近いうち話すからさ」
一はニッコリと笑って言った。
寒い。教室の中は暖房が効いていても寒くてたまらない。早く家に帰りたい。
樹里のいる家に。
しかし、更衣もとうに過ぎて、マフラーなしじゃ登校できないような季節になった頃、ついに相沢が一に怒ったような顔でやってきた。
「おい、イチ。お前なんで部活こねえんだよ。山田も皆も気にしてるぞ」
自分の席でぼうっとしていた一はゆっくりと前に立ちはだかる相沢を見上げた。
まるで遠い世界の人間を見る気分だった。
「ああ、ごめん。退部届まだ出してなかったな」
「はあ?!何だよそれ!退部って!」
相沢が声を荒げた。窓の外を雪がちらちらと舞う。
「いや、うちの母親がさ、最近身体の調子悪くて、弟の世話とかも俺がやんなきゃいけなくて、正直部活どころじゃねーんだ」
我ながら嘘が上手くなったと思う。まあ、あながち嘘でもないのだけれど、本当でもない。
「まじかよイチ。何でそんな大変なこと俺らに黙ってたんだよ……」
「気い使わすの嫌だし」
「何言ってんだよ友達だろ?!」
「ん。悪い。まあ、山田には近いうち話すからさ」
一はニッコリと笑って言った。
寒い。教室の中は暖房が効いていても寒くてたまらない。早く家に帰りたい。
樹里のいる家に。