サイレント
「大丈夫。あ、そうだ。拓海君もお兄ちゃんと一緒にお風呂入っちゃったら?」
「お姉ちゃんは?」
「私は家に帰ってから入るからいいの。お兄ちゃんの背中流してあげなよ。きっとハジメくん喜ぶよ?」
素直な拓海は樹里の提案に「うん!わかった!」と言うとパジャマを持ってバスルームへと走って行った。
バスルームの扉が閉まる音を確認すると樹里は慌ててバッグから煙草とライターを取りだしてベランダへと飛び出した。
凍えるような寒さにも構わず、震える手でライターの火を点けようとする。
何度も点け損なってようやくの思いで煙草に火をともすと樹里はゆっくりと肺に煙を取り込んだ。
肺に煙が充満し、染み込んでゆく。
樹里は心が落ち着いて行くのを感じ、ホッと一息ついた。手の震えも治まっていく。
一本吸い終える頃には身体は冷え切り、凍えそうだった。
けれど樹里は二本目に火をつけ、しゃがんだまま空を見上げた。
雲の隙間から澄んだ夜空が覗き、いくつもの星が輝いているのが見えた。
今夜もまた、寝る前に小説を更新しないと。
樹里の書くほぼ実話の物語はすでに100ページを超えていた。読者も大していない小説を顔見知りの誰かが読むことなどないだろうと、安心して事実を書き連ねている。
誰にも相談出来ない代わりに小説として書くことで、少しだけ楽になれた。
「お姉ちゃんは?」
「私は家に帰ってから入るからいいの。お兄ちゃんの背中流してあげなよ。きっとハジメくん喜ぶよ?」
素直な拓海は樹里の提案に「うん!わかった!」と言うとパジャマを持ってバスルームへと走って行った。
バスルームの扉が閉まる音を確認すると樹里は慌ててバッグから煙草とライターを取りだしてベランダへと飛び出した。
凍えるような寒さにも構わず、震える手でライターの火を点けようとする。
何度も点け損なってようやくの思いで煙草に火をともすと樹里はゆっくりと肺に煙を取り込んだ。
肺に煙が充満し、染み込んでゆく。
樹里は心が落ち着いて行くのを感じ、ホッと一息ついた。手の震えも治まっていく。
一本吸い終える頃には身体は冷え切り、凍えそうだった。
けれど樹里は二本目に火をつけ、しゃがんだまま空を見上げた。
雲の隙間から澄んだ夜空が覗き、いくつもの星が輝いているのが見えた。
今夜もまた、寝る前に小説を更新しないと。
樹里の書くほぼ実話の物語はすでに100ページを超えていた。読者も大していない小説を顔見知りの誰かが読むことなどないだろうと、安心して事実を書き連ねている。
誰にも相談出来ない代わりに小説として書くことで、少しだけ楽になれた。