サイレント
「貸してくれる人……ねえ。それって女?」

意外にも父は眉間に皺を寄せながら言った。
言い当てられて一は少し動揺する。

「女、か。それもそこそこ若いってやつ?……お前年上の女に好かれそうな面してるもんな」

「そんなんじゃない……」

「けど、そりゃあ、やめといた方がいいぜ。お前はまだガキだ。ガキが大人の女から金もらうってのはどーいうことか、わかるよな?」

父の言葉にカッと頭に血が上った。
立ち上がり、父のスーツの衿につかみ掛かる。

ガシャンとテーブルの上のグラスが揺れてコーラとコーヒーが飛び散った。

「てめえに、」

喉に何かがつかえているようだった。

「てめえに言われたくねえよ!お前親だろ?!親が子供面倒見ねえで偉そうな口叩くなよ!!」

公務員が聞いて呆れる。こんな奴が県民のため仕事だ?ふざけんな。

「言っとくけどこれって虐待だよな?!親が子供放置して、俺やタクが死んだらどうするつもりだよ!」

ガクガクと父を揺さぶって一は怒鳴りつけた。
唾が父の顔に飛ぶ。
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