サイレント
D
one
一が指定したのは普通のホテルとビジネスホテルの中間のような、全国にいくつも店舗があるホテルだった。
一はそこのロビーで樹里が来るのを待った。
15分ほどすると、入口の自動ドアが開き、白っぽいコートを着た樹里が入ってくるのが見えた。
樹里はすぐに一に気がついたが、一に声をかけずにフロントへ向かうとキーを受け取ってエレベーターへと歩いて行った。
一はその後を少し距離を開けてついていく。
樹里に続いてエレベーターに乗り、帽子を深く被ったまま樹里の足元を見た。
珍しくデニムを履いていない。華奢な足が二本、真っ直ぐ伸びていた。
樹里と一はそのまま言葉を交わさずに部屋に向かった。
廊下に人がいないのを確認してさっと部屋へ入ると一気に緊張の糸が切れた。
何故外で会うだけでこれ程緊張しなくてはいけないのだろう。
帽子を外し、部屋に入ってもなお一に背を向けたままの樹里を呼んだ。
「先生」
樹里が振り返る。
「もう誰もいないよ」
樹里に言い聞かせているんだか自分に言い聞かせているんだかわからない口調で言って一は樹里の前に立った。
自分より少しだけ身長の低い樹里を見下ろし唇を重ねる。
一はそこのロビーで樹里が来るのを待った。
15分ほどすると、入口の自動ドアが開き、白っぽいコートを着た樹里が入ってくるのが見えた。
樹里はすぐに一に気がついたが、一に声をかけずにフロントへ向かうとキーを受け取ってエレベーターへと歩いて行った。
一はその後を少し距離を開けてついていく。
樹里に続いてエレベーターに乗り、帽子を深く被ったまま樹里の足元を見た。
珍しくデニムを履いていない。華奢な足が二本、真っ直ぐ伸びていた。
樹里と一はそのまま言葉を交わさずに部屋に向かった。
廊下に人がいないのを確認してさっと部屋へ入ると一気に緊張の糸が切れた。
何故外で会うだけでこれ程緊張しなくてはいけないのだろう。
帽子を外し、部屋に入ってもなお一に背を向けたままの樹里を呼んだ。
「先生」
樹里が振り返る。
「もう誰もいないよ」
樹里に言い聞かせているんだか自分に言い聞かせているんだかわからない口調で言って一は樹里の前に立った。
自分より少しだけ身長の低い樹里を見下ろし唇を重ねる。