エルドラドステージ
「ここは究極の社会主義国です。地位や価値、あらゆるものを平等にすることにより、国民は他人と己を比較する必要がなくなりました。」

嫉妬や憎しみはこの国には存在し得ない。そしてそれは人々の一生の幸福を意味すると男は言った。

ここは―アルカディアはそれを実現化した世界で唯一の、本当の楽園なのだと。

「嫉妬や憎しみが存在しえない…?全てが平等だと全ての人間が同じように感じるなんてあり得ないぜ?」

人の感情はどこで揺さぶられるかわからない。
いくら形を平等にしたって、それは不可能だ。
荒れ果てたこの時代に、「生きる」と言う絶対的な目的を同じくしたほんの小さな集団でさえ諍いが絶えないのを、三人は何度も見てきた。

たった三人の―自分たちにでさえ、そういう感情はお互いに持ち合わせている。
そして、だからこそお互いを尊敬し合うこともできるのだ。

武の問いかけに淡々と話す男の心の凪が、一瞬だけ揺れたのを章は見逃さなかった。

「ここには彼らを…全ての人間を管理しうるようなコントロールシステムがあるのです。」

男は再び画面を緑に戻した。
例えばこのモニターに映る景色が― これがこの国の全てを映しているのだとすれば、とても小さな国だ。これまで自分たちが歩いてきた分の何十分の1でしかない面積だろう。
しかし全てを平等にするには広すぎる。


「コントロールって…どう言うことなんだ?」

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