エルドラドステージ
外に出た二人が川のほとりで春の風合いを楽しむのも日課になっていた。

アルカディアの移り行く季節は、本物を知らない彼らにとっては紛れもない現実。


「この上って砂漠なんだよな。空がすごく高く見えるけど、何メートルくらいあるんだろ?」

登が寝転がって空へ手を伸ばす。章もつられるように空を見上げた。

青い空に差す太陽の光。眩しそうに目を細める登に、章は陰を作った。

目を閉じると瞼の裏に赤い景色が広がる。血液の通う赤。じっとその生きる証を見つめていると、少しずつ章の陰に変わってゆく。

ウトウトし始めると、章は体を動かして登に光を差した。


「うわっ、眩し~。なにすんだよ」

「やっぱり登は太陽が似合うから。」

笑い声と川のせせらぎが混じりあった空間だった。
ついこの前まではこの太陽に悩まされていた。ついこの前までは水の一滴の音にすら敏感に反応していた。

眩しそうに目を細める登に再び陰がかかる。目を開けると章が優しく口づけた。
章は登の茶色がかった髪を撫で、耳の後ろに顔をうずめた。
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