エルドラドステージ
ケイコを見て強く思う。
ここは楽園だ。たとえ裏でいかに人間的でないと言われるような操作が行われていようとも。人々の心は憎しみをしらず、自由に夢を見る。
それだけでここは充分に楽園なのではないだろうか。

なぜ人は今ある幸せを忘れてしまうのだろう。もっともっと上の幸せがあるのではないかと夢を見るのだろう。なぜ今より不幸せな自分を想像せず、前へ前へと夢見るのだろうか。

しかし、だからこそアルカディアは細部にまで神経を張り巡らせている。

「もし外の世界があったらここを出たい?」

「もちろんよ。見てみたいわ。どんな条件下でどんな植物がいてどんな生物が取り巻いているのかを見てみたいわ。」

ケイコが瞳を輝かせて言った。

「例えば…一度出たら、二度とここに戻れないとしたら?」

武の質問にケイコは少しうつむいて考えていた。しばらくして顔を上げると、武の手を取って口づけた。

ケイコがそっと唇を離して微笑むと、風が揺れた。

「武さんが守ってくれるわよね。」


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