エルドラドステージ
彼は浮き上がった根元に充分な栄養と水を含んだものを巻きつけられた。
息を吹き返した彼は大きな機械に持ち上げられ、運ばれてゆく。巨体のすべてに太陽からの強い日差しを避けるための布がかけられた。

布が作った冷たく暗い影は彼を長い緊張から解き放った。

この時が、この布越しの太陽と永遠の別れだったとはきっと彼は思いもしなかったろう。

彼はしばしの休憩をとろうと意識を閉じた。



【私はこうしてここに来た。望んで辿り着いたのかも知れないし、違うとも言える。私は生きたかった。かつてのように、昆虫や動物や人間と季節を感じたかった。ここではそのすべてが手に入る。】


彼の傍らにある機械がトクントクンとまるで心臓のポンプのように一定のリズムを刻みながら彼に栄養を送っている。

しかし彼の体はもうとっくに命の期限を越えており、彼の命を繋いでいるのはこれらの― 彼の体に数え切れないほどの穴を開け、無理やりに栄養を送り続けるこの機械らが彼を生かしているのは明らかだった。

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