エルドラドステージ
しかしやがて、シュウはそこにいるようになった。


「よぉ。」

簡単に声をかけるとうつむくだけで、あとは黙ってそばにいる。

ある時、登がいつものように彼と歌っている時だった。


それまで少し離れたところで登と彼を見ていたシュウが、急に彼に駆け寄り抱きしめた。

彼の幹の三分の一にも満たない小さな手で精いっぱい腕をまわし、彼の体に耳をあてた。



「どどぅ…」


シュウの小さな声に登はマンドリンの音を止めた。


「どどぅ…どどぅ…って…いってるよ」


「…きっと歌ってるんだよ」


登は小さくマンドリンの弦をはじいた。


「歌って…るの?」


目を閉じてまた耳を澄ましている。


「歌ってるね…でも…」

そう言うとシュウは森の奥へと駆け出した。


その日、登は何時間もただ黙って彼を見つめていた。

シュウが言いたかったこと。


彼が言いたいこと。


そして自分が思っていること。


同じだろうか?


同じなのだろうか?


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