エルドラドステージ
ある日、コントロールルーム内で緊急会議が開かれた。


議題は「彼」の最期の刻(とき)について。


アルカディアの国宝、いや世界でおそらく最後の完全なる遺伝子を持つ植物。


神が創り給うたものは、どんな高度科学技術をもってしても到底かなわない。


その尊い遺伝子を持つ彼は、アルカディアで絶対の存在だ。

その「彼」が、もはや科学の力虚しく、終わろうとしている。



いつを彼の「終わり」とするのか。


ヒトであれば、心臓が鼓動を停めた時、あるいは脳波に反応が見られなかった時。または静かな眠りについた時。


植物である彼に心臓はない。循環器の活動という意味ならばとっくに終わっている。
装置を外せば即、循環は止まる。

脳波に近いものは植物にもある。気候など環境の影響でそれは違う数値を示す。アルカディアの植物にはごくわずかな反応しか見られないが、彼は外部環境に大きい影響を受けているのが見てとれた。

これが彼が絶対的な遺伝子を持っている証拠なのだ。
つまり彼には明らかな「意思」がある。



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